インフォメーション(一般向け)

支部概要

一般財団法人 道路管理センター
千葉支部
〒260-0027
千葉市中央区新田町36-15
オカバ千葉テックビル3階
TEL.043-204-3661
FAX.043-204-3662

道路管理システムの活用事例【★東日本大震災(千葉市)の下水道復旧に貢献★】

2013年1月 9日

道路管理センター情報 第41号(2012(平成24年)12月)掲載

道路管理センタ-千葉支部 総務企画課長 屋代 正志

1.はじめに

 道路管理センタ-千葉支部では、東日本大震災の災害復旧に当たって、道路管理システム(ROADIS)から出力印刷した道路・地形デ-タを含む占用物件状況平面図(実測によるS=1/500)を千葉市に資料提供し、早期復旧に有効活用された。このような事例は、これまで数少ないケ-スのため、どのように活用し、どのような効果があったのか、下水道施設の復旧事例を紹介する。

2.千葉市内の被災状況

 千葉市の6区のうち、埋め立て地域である美浜区(面積:約2,100ha)で液状化により、道路44km、下水道施設7km(699スパン)の被害が発生した。

被害内容:管渠のたるみ、ひび割れ・土砂の堆積・マンホ-ルの損傷、汚水桝及び取付管の不具合等

【資料1】:千葉市美浜区被災状況図
千葉市美浜区被災状況図

【資料2】:震災直後(H23年3月)写真
マンホール蓋の浮き上がり(震災直後(H23年3月)写真)
マンホールの浮き上がり(震災直後(H23年3月)写真)

3.地震発生から復旧までの経緯

平成23年3月11日 地震発生、現地調査着手
平成23年4月10日 概ね応急復旧完了
平成23年4月11日 道路管理センタ-千葉支部から千葉市に資料提供、その後、本復旧工事の設計・積算に着手
平成23年6月   国の災害査定を受ける
平成23年7月   順次、本復旧工事着手
平成24年3月末 概ね本復旧工事が完了

【資料3】:復旧工事施工状況(H24.2)
復旧工事施工状況(H24.2)

4.提供資料

道路管理センタ-千葉支部から千葉市に資料提供
提供資料

5.下水道復旧での活用事例と効果

【資料4】

【下水道復旧での活用事例】
①地下埋設物の調査
②設計計画
③他企業との協議

【効 果】
①地下埋設物調査作業の時間短縮
②地下埋設プロット、マンホ-ル及び立坑の位置、平面、縦断線形、仮設工法、施工方法の選定の早期検討が可能
③支障物件の移設及び近接協議の早期判断に利用

【結 果】
地震発生から、わずか約3ケ月後には、国の災害査定(約90%)を受ける事が可能となった。
また、復旧工事の早期着手並びに工事の手戻り・事故がなく、被災地域の早期復興につながった。

資料4について以下で解説する。

①地下埋設物調査作業の時間短縮では、もし、千葉市域に道路管理センタ-がなく、一元化された占用物件状況平面図もなかった場合、本復旧の工事設計を行うため、ガス事業者、水道、NTT、東電など各企業を周り、占用物件の位置確認を一から行わなければならなかった。
また、各企業も管理施設等の被害を受け、応急復旧などで混乱していた時期であり、埋設物件調査の作業で約2~3ケ月間は、労力を費やす結果となったであろうことが想定される。

②設計計画での活用事例では、千葉市の道路工事・下水道工事・水道工事など、道路区域内で行う工事は、道路台帳平面図の精度が高く、現地と整合が取れていることから、各部署でも、縮尺500分の1の道路台帳平面図を使用し、設計図面を作成している。
その道路台帳平面図とセンタ-から提供された占用物件状況平面図の道路骨格デ-タと下水道管理台帳平面図の道路骨格デ-タが、縮尺もデ-タもすべて同一のものであったことから、地下埋設物プロット、マンホ-ル及び立坑の位置や工法選定の早期検討が容易にでき、設計図面の早期完成に繋がった。
下水道施設復旧設計の事例(図-1)ではバイパス案と一部支障物件の移設案を選択する際の判断にも活用され、バイパス案の場合、掘削範囲に水道管とガス管が縦断的に支障となっていて、移設を行った場合、工事期間と費用が増すことから、道路内の空いているスペ-スにバイパス管を敷設する設計となる。
一方、一部支障物件の移設案は、掘削範囲の一部しか水道管が支障にならないので工事期間と費用を考慮し、水道管を移設した設計となるもので、このような設計・施工方法の選択を速やかに行うために占用物件状況平面図が活用されたものである。

下水道施設復旧設計の事例

③他企業との協議については、通常はガスや水道などの支障移設依頼の受理や支障物件移設の設計・積算は、工事発注後の試験掘削の結果により、判断している。今回は占用物件状況平面図とそれを基に作成した下水道本復旧工事の設計図面が、現地と整合が取れているものと判断し、道路管理者・下水道管理者・各公益物件管理者の3者で合意し、災害復旧工事を早期に進めることとした。
実際に工事着手後には、安全確認のため試験掘削を実施したが、提供資料と現地との相違は、ほとんどなく、円滑に支障物件移設や本復旧工事を進められた。
支障移設の準備・設計を試験掘削を行わず、占用物件状況平面図を基に作成した設計図面で各企業が実施した事、更に現況図面が実際に現地と相違がなく、設計変更を伴わなかった事で2・3ケ月の工期短縮が図られ、埋設物調査の短縮期間も含めると5ケ月間ほどの早期復旧に繋がったのではないかとの担当部署の見解であった。
また、震災後、千葉市では2週間に一度の災害復旧工事調整会議でお互いの工事手順を確認した。
通常の道路調整会議などに加え、道路管理センター主催のSWG会議など道路管理者と公益物件管理者が集まる機会が多かったので、緊急時においてもコミュニケ-ションを図りやすい体制だったことも早期復旧に繋がった大きな要因である。

最終的におおむね災害復旧工事が災害発生から1年後の平成24年3月に完了したことは、千葉市の早期復旧、早期復興に繋がった。
その要因として、千葉市域に道路管理センタ-があり、各公益物件を一括してデ-タに取込んでいる道路管理センタ-の占用物件状況平面図(縮尺1/500)の存在が大きく寄与したものと思われる。

6.おわりに

道路管理センタ-千葉支部では各システム参加者が災害発生時~復旧時までに必要な縮尺(S=1/500)の道路平面図と同縮尺の占用物件状況平面図の鮮度及び精度について実測補正に基づき、引き続き図面更新の維持・向上を図り、災害時にも活用できるデータ管理・システム構築を行っていくこととしている。また、紙ベースの提供のみならず、電子データでも効率的に提供ができるよう、今後も更なる検討を進めて行きたい。

Page Top